親権
親権は、お母さんの元に子供がいる限り、お母さんで決まりです。どんなに男グセが悪かろうと、どんなに給料が安かろうと、或いは定職がなかろうと、お母さんの側で子供が育っている限り、お父さんが親権を争っても勝ち目はありません。
私がかなり前に実際に扱った事件では、依頼者はお父さんで、お母さんがアルコール依存症でした。医者に通ったり、断酒会に通ったりして、それなりに治療に励んではいました。そんな中、子供を連れて家を出て実家に戻りました。依頼者が子供を連れ戻しにいくと、部屋にはビールの空き缶が転がっていたとのこと。こんなお母さんに子供を託せないと、それはそれは真っ向から親権を争いました。家庭裁判所には、精神科医も詰めていますので、その医師の診断なども仰ぎましたが、結局現在のところはそこまで危ない状態ではないということで、親権を取ることができませんでした。
お父さん側の苦肉の策として、子供の監護権はお母さんに渡すが、親権はお父さんが保持する、なんていう方がいます。理屈の上では、両者は別物ですので考えられなくもありませんが、裁判所の運用は、分けない扱いになっていますので、これはいくら主張しても無理です。
だからと言って、子供の親権を全く主張しない方が良いという訳でもなく、それなりに危うい状況がお母さん側にあるのなら、ちゃんと主張して、子供のことが心底心配だというアピールをすることも大事だと思います。離婚後の子供との面接交渉の回数を一般よりも増やしたいと思っている場合などには、有効かと思います。
なお、状況によっては、お父さんの側で親権を取れないこともない場合があります。この場合には、離婚宣言をする前に、ご一報いただければ有効なアドバイスができるかと思います。

面会交流について
1 基本的には、月1回、長期休みの時は泊付きで、というのが一般的です。
しかしながら、相手がモラハラ男だったりすると、また、精神的な病に罹っていたりすると、子供に悪影響を及ぼすから、と言う理由で、絶対に面会交流をさせたくない、と主張される方も数多くいます。
確かに、ここは代理人としては悩ましいところです。私は、子供が可愛くて仕方がないので、子供に会えないお父さんの気持ちを考えると、胸が締め付けられる思いがします。
裁判所も、基本的には同じ思いです。子供は、お母さんが虐められている姿をみたり、別居して二人きりになったりして、お母さんに対してとっても気を遣うのです。「お父さんに会いたくない?」と聞くと、「会いたくない。」と言ってくれるものです。しかしながら、どんな子供虐待の事件を見ても、子供は「お父さん、お母さん大好き。」と言うのが殆どで、心底「お父さんに会いたくない。」とは言わないのです。
確かに、妻側のお話を聞いていると、それなりに理論立てて、「今、お父さんに会わせてはならない。」と説明され、それなりに説得力がありますが、基本的に裁判所はこれを聞き入れません。逆にお説教をされてしまいます。
この一点で、離婚の調停が不調になってしまうのはもったいない話です。苦肉の策として、面会交流についての条項を入れずに離婚を成立させる例もあるようですが、どのみち、相手からは面会交流の調停を起こされ、紛争が再燃してしまうのです。であれば、相手にも気持ちよく養育費を払ってもらえるよう、面接の方法などを工夫しながら、とりあえず応じていくという方が、前向きでよろしいかと思います。
家庭裁判所には、児童室という部屋があり、カメラがついていてモニターで見学できるようになっていたり、マジックミラー越しに見学できる別の部屋があります。
主に、離婚にちなんで、別居状態が続き、小さな子供さんとしばらく会えなかった一方配偶者が、今後面会交流をするにあたって、ちゃんと会っていけるかどうかを試行する部屋です。
何度か自分の受け持っている事件で、試行の様子を見たことがありますが、最初嫌がる子供さんも、やはり血のつながりがあるのか、最後は楽しそうに終わる。「またね。」なんて言ってることがある。中々胸が熱くなる瞬間でもあります。
また、別の機会でも書きたいと思いますが、私がよく受任する少年事件でも、父親との関係が良好な少年たちに出会った試しがありません。父親の存在は、子供の成長にとって、とっても大事だと思います。

2  離婚に伴う面会交流で、子供に悪口を言われるのが嫌だ、或いは、連れ去られないか心配だ、という場合には、強行に親権者の立会いを主張し、相手も意地になって、離婚の話し合い自体がおかしな方向へ行ってしまうことがあります。
こういう場合の対処としては、第三者に立ち会ってもらうという手段があります。いろいろな団体がありますが、裁判所でよく勧めてくれるのが、エフピック(FPIC)という団体です。調査官のOBが多く関わっているようです。
有料ですが、検討して見る余地は、多いあると思います!
(社)家庭問題情報センター HP  http://www1.odn.ne.jp/fpic/

まとめ
1 世の中の離婚が、2分に1組と言われているように、凄い勢いで離婚問題が発生しています。基本的には、「我慢がならない。」というのが一番大きな理由のように思います。私が扱った離婚事件では、結婚1週間で別居して離婚した、というケースが最短です。また、熟年離婚で何十年も連れ添ったのに「我慢がならない。」と離婚になったケースもあります。要は、我慢がならないかどうかは、一緒にいた期間はあまり関係ない、ということでしょう。また、どちらかというと、「我慢がならない」と女性側から主張されて、代理人になるケースが多いのですが、実感としては、女の人は一度「もうダメ」と思うと徹底的にダメで、考えが絶対に変わらないという印象を受けてます。こうなったら、男の方は、どう頑張ったって離婚は防げないものと覚悟した方がよろしかろうと思います。
以前は、「もうちょっと話し合ったらどうですか?」なんて言ってましたが、最近では、「もうどうせ離婚以外には考えられないんでしょ?」と聞くようにしています(笑)。「子はかすがい」なんて、一昔前は、よく言われたものですが、最近では子供が居た場合には、別れてしっかりと養育費をもらう、という方が圧倒的多数です。

また、不貞のケースも、女性側がされるケースが以前に比べると増えてきました。男性も情けなくなったというか、女性が男性化したというか。。。
2 「離婚して、生活できるのか?」というのが、男性側の唯一の伝家の宝刀ですが、まぁ、何とかなるものです。この言葉におびえて、離婚を決意できずに、惨憺たる生活を送っておられる方も居るかと思います。
いざとなったら、生活保護もあります。児童手当ももらえます。何とかなります。ご主人の経済力に依存しないで、自立するための手段としての「離婚」ということで、前向きに立ち向かうとよいでしょう。前向きに頑張りさえすれば、思わぬところから就職口がもらえたりもします。そうすれば、我慢ならないもと旦那の世話にならずにも済みます。これが一番良いのではないでしょうか。私は、依頼者にいつもそんなことをお話ししています。
最近の離婚事情の購読、ありがとうございました。

銀座ウィザード法律事務所